1面 春秋
今朝の1面コラム「春秋」は不思議な読後感。京子さんが、どこの誰かはわかりませんが、内容はしみじみします。
おひとりさまだけではなく、夫婦もいずれは別れが来ます。一人になります。
「北の町の京子さんはおひとりさま。ひとりで生きて働いて、小さなおうちも建てました。親を見送りその後は、つましいながらも悠々自適の年金暮らし。絵を描きピアノを楽しんで、日課は夜ごとの生存確認の長電話」
詳細は敢えてぼかしたのでしょう。
「90歳のある日、家で転んで意識朦朧(もうろう)、搬送された。やむなく頼んだ身元保証人が書けという。言われるままに一筆入れた。『財産はお任せ致します』。そこからは急転直下に事態が進む。電話は通じず、面会かなわず、ほどなく届いた死亡の知らせ。誰にも見送られることもなく、あっという間にお骨になった。煙と消えた」
身元保証人はいたのですね。この方が死亡の知らせをしたのか?誰にも見送られなかった、とは?長電話の相手にも事前の連絡はなかったのか?
謎は深まりますが、問題はそこではありません。
「京子さんはひとりでも孤独じゃなかった。それでも、死への道のりを主体的に歩むのは難しい。ある研究会によれば、高齢者の身じまいは二分される。立つ鳥跡を濁さずの『タツトリさん』と、後は野となれ山となれの『ノトナレさん』。毎年160万人強が死ぬこの国ではタツトリを志す多くがノトナレと化して終わる」
孤独ではなかった京子さんも結局は「ノトナレさん」に。立つ鳥跡を濁さず、がいかに難しいか。
「自分の『自分の住むところには/自分で表札を出すにかぎる』。おひとりさまの先輩、石垣りんの代表作は精神の独立を高らかに歌うが、こうも続く。『やがて焼場の鑵(かま)にはいると/とじた扉の上に/石垣りん殿と札が下がるだろう/そのとき私がこばめるか?』。誰もが遭遇する死の傍若無人ぶりへの言及とも読めて、興味深い」
ああ、この詩は知っています。読みました。
石垣りんさんは銀行員として働き、多くの詩を残しました。
それでも最後は来ました。
生涯独身だった石垣りんさんが「タツトリさん」だったのか「ノトナレさん」か、今となってはもはやわかりません。

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「90歳のある日、家で転んで意識朦朧(もうろう)、搬送された。やむなく頼んだ身元保証人が書けという。言われるままに一筆入れた。『財産はお任せ致します』。そこからは急転直下に事態が進む。電話は通じず、面会かなわず、ほどなく届いた死亡の知らせ。誰にも見送られることもなく、あっという間にお骨になった。煙と消えた」
身元保証人はいたのですね。この方が死亡の知らせをしたのか?誰にも見送られなかった、とは?長電話の相手にも事前の連絡はなかったのか?
謎は深まりますが、問題はそこではありません。
「京子さんはひとりでも孤独じゃなかった。それでも、死への道のりを主体的に歩むのは難しい。ある研究会によれば、高齢者の身じまいは二分される。立つ鳥跡を濁さずの『タツトリさん』と、後は野となれ山となれの『ノトナレさん』。毎年160万人強が死ぬこの国ではタツトリを志す多くがノトナレと化して終わる」
孤独ではなかった京子さんも結局は「ノトナレさん」に。立つ鳥跡を濁さず、がいかに難しいか。
「自分の『自分の住むところには/自分で表札を出すにかぎる』。おひとりさまの先輩、石垣りんの代表作は精神の独立を高らかに歌うが、こうも続く。『やがて焼場の鑵(かま)にはいると/とじた扉の上に/石垣りん殿と札が下がるだろう/そのとき私がこばめるか?』。誰もが遭遇する死の傍若無人ぶりへの言及とも読めて、興味深い」
ああ、この詩は知っています。読みました。
石垣りんさんは銀行員として働き、多くの詩を残しました。
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